先生からのメッセージ

早川千信先生

2008年11月28日

オーストリアの気になる3人-part2 ウィーンにフンデルトヴァッサーというアーティストがいました。ウィーンに行くまでは、彼がもともと画家であることは知らず、ただちょっと奇抜な建築家だと思っていました。どちらかというと“わびさび”嗜好の私にとっては彼の作品は派手すぎてあまり興味もありませんでしたが、せっかくウィーンに来たことだし、ちょっと見てみようとふらりと訪れた芸術館で彼がなかなか面白い人物であることを知ってしまった。 地図を頼りに、路面電車を乗り継ぎ、住宅街で降り、あるはずの方向にひたすら歩く…。本当にこんなところにあるのかなぁ?というような特徴のない町で不安になりながら、道行く人々に尋ねると、ただ、ただ指を指して『あっちの方、行けばわかるよ。』と。指さす方向に進んで行くと確かに奇抜な建物が…。 一目でわかった…!! ウィーンの町並みにそこだけ異空間が浮かび上がっていたのだ。強烈過ぎる彼の作品に一瞬引いてしまった。これは、遊園地にあるべき建物じゃないのか…と。曲がりくねった窓や壁、パッチワークのようなカラフルな外観に、所々からにょきにょきと植物が建物の一部みたいに生えていた。それはとても不規則で子どもが描いた絵みたいに遊び心いっぱいだった。 そして、なんといってもこの人の生き方がなかなか面白い。自由な精神と自然との共存が彼のテーマであり、作品の中にも不断にそれが込められているが、なんと言ってもすごいのはこの人自身が、『我が人生、自信を持って、自分の感性で、自由に正直に生きる』ことを貫いた人だからだ。たとえば、靴や服、そして家まで自分の理想のものを納得のいくように自ら作ってしまう。とにかく、そのこだわりと実践力には驚かされる。自然を愛したエコロジストであり、直線を極端に嫌った自由人、裸でスピーチもしてしまうとてもエキセントリックな人、それがフンデルトヴァッサーだ。 私は西洋文化と東洋文化では根本的に自然観の違いがあると思う。例えば日本庭園なんかは完全に自然と同化した美だけど、人の手が加わった上で自然と共存しているのが西洋の美(噴水なんて、完全に自然に逆らっていますよね)。そういう意味では、フンデルトヴァッサーの作品は、曲線を不断に使い自然に同化しつつも自己主張もしっかりとしてしまっている両方の要素を備えた、未来的な自然美なのかもしれない。作品の好き嫌いは別にして、彼の世界(作品)にちょっとだけ、お試し程度で住んでみたい気もした。 ちなみに、大阪にある‘ゴミ処理工場(舞洲工場)’は彼の作品です。私は残念ながらまだ、実物を見たことがありません。もし、見たことがあるという人は感想を聞かせてくださいね。(とてもへんちくりんなので見たらすぐにわかると思います。)

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