先生からのメッセージ

松井絵美先生

2008年5月21日

2月号でお話した「フランダースの犬」を覚えていますか。画家を目指す貧しい少年ネロとその愛犬パトラッシュの切ない物語です。フィクションではありますが、芸術家を目指していた先生にとっては、自分を重ね合わせずにはいられない特別なお話です。と言うわけで、この物語の舞台となったベルギーのアントワープへ行ってきました! まずは、ネロの絵画コンクールの発表があった市庁舎の見学です。最後の望みを託したというコンクールでしたが、残念ながら落選という結果に終わってしまいます。とても立派な建物でしたが、ネロの落ち込んだ姿が目に浮かび、悲しい気持ちになりました。続いて、ネロとパトラッシュが最後に目にしたというルーベンスの祭壇画を見るために、ノートルダム大聖堂へ行きました。視界に入ってきたのは大きな3つの祭壇画です。中央にある「マリア被昇天」、これはネロの時代、誰でも見ることができたそうですが、その左右に位置する「キリストの昇架」と「キリストの降架」は、普段はカーテンで閉じられていて、お金を払わなければ見ることができませんでした。当然のことながら、お金のないネロには見ることができません。クリスマスイブの夜、ミサが終わり人々が立ち去った後、何かに導かれるようにしてネロはこの大聖堂へとやってきました。幸運にも祭壇画カーテンが開かれていて、念願の「キリストの降架」を目にすることができたのです。その後、ネロを探してやってきたパトラッシュとともにここで昇天します。ネロがこの絵をどんなに見たかったことか、実際に祭壇画をみてようやくわかったような気がします。生き生きとした描写や鮮やかな色使い、ダイナミックな表現方法は圧倒的でした。 最後に、ネロが住んでいたということになっているホーボーケンという場所へ行きました。トラム(路面電車)で30分ほどの道のりです。ネロとパトラッシュは、ミルクを積んだ荷車を引いて、毎日この道を往復していたのでしょう。最初に訪れたのは、彼らが葬られたことになっている聖母教会です。ホーボーケンの人々によって手厚く埋葬されたそうです。次に10分ほど歩いたところにあった情報センターを訪れました。お土産のほか、本や風車の模型、ネロとパトラッシュの像が展示されていました。 この後、思う存分ホーボーケンの町を散歩して楽しみましたが、人の少ないのどかな田園風景の残る町で、「フランダースの犬」に出てくる村そのものだったように感じます。実はこの地区の住所記録によると、物語に登場する人物が数名実在していたことがわかったそうです。もしかしたらネロとパトラッシュ、そしておじいさんは実在していたのかも知れませんね。

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