先生からのメッセージ

早川千信先生

2008年5月26日

 子供のころ読んだ‘世界七不思議’についての本でその存在を知り、高校世界史の授業でその名を思い出し、戦場カメラマン‘一之瀬泰造’を知ることでいよいよ想いが募ってしまったカンボジアのアンコールワットと、とうとう対面するときがきた。 image022.jpg 当時、ポルポト派の支配下にあったとはいえ、彼が命を賭けて潜入したアンコールワットとは違い簡単に入ることができたので少し拍子抜けしてしまった。多くの観光客で賑わっていたが、私の中ではアンコールワットというと、‘すばらしきクメール建築!’だけでなくどうしても‘この撮影のために命を落としてしまった一之瀬泰造’そして‘その当時の悲しいカンボジアの歴史’が背景に浮かんでしまう。一人重々しい気持ちで足を踏み入れてみた。  お堀を抜け正門をくぐるとあの写真でしか見たことがなかった巨大な石の建物がどかんと目前に広がり圧倒されてしまった。建物の前には聖池があり、それに映るアンコールワットもなんとも神秘的。ここに蓮の花なんか咲いていたら尚、ステキだろうな…とその風景を想像しつつ突き進む。建物に入るとひんやりとした石の回廊に、繊細な文様やインド神話の『ラーマーヤナ』『マハーバーラタ』(←そのうち世界史でインド二大古典叙事詩として習うでしょう。)などのストーリが刻まれていた。(アンコールワットはもともとヒンドゥー教寺院として建てられている。)まさに建物全体が立体絵巻物だ。興味深いものが沢山あったが特に女神デバダーのレリーフには魅せられてしまった。ナイスボディの美女が手足を曲げ不思議な動き(アプサラダンス)をしているのだが、キュッと引き締まったウエスト(なんともうらやましい!!)に微笑を浮かべる姿はとても女性らしく、同じ女性であっても惚れてしまいそうだ。 image024.gif 塔の天辺に上るための階段は建物外側にありとても急だ。もちろん手すりはないので手と足で這うようによじ登らなくてはならない(勾配の急なピラミッドを登っていく様な感じ)。下を見ると足がすくんでしまうので一気によじ登る。最高塔からの景色も素晴らしく、登るだけでも必死なのに約千年前にこれを造ってしまったクメール人の技術に改めて驚かされた。アンコールワットの中を歩いていると、大昔にここに哲学的宇宙観を刻んだクメール人にさかのぼり、密林の中に眠っていた時代、戦争で荒れていた時代、そして観光客で賑わう平和な今と様々な時代背景を思い、ぐるぐると目が回りそうになった。気付いたらカンボジアを発つ日の早朝にも来てしまっていた。朝日に映るアンコールワットはとても神々しく魅力的だった。  帰りのタイ国境までのマイクロバスは予想通り途中でパンクし、何もない炎天下の中40~50分待たされる。でもなんとなく、ま、いっかという気持ちだった。

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